夜、寝ている間におしっこを漏らしてしまう夜尿症。おねしょと混同しがちだが、おねしょは生理現象で、夜尿症は病気だ。小学生になっても「お漏らし」が続く場合、医療機関で治療を受ける。規則正しい生活リズムを守ることも重要となる。(竹岡伸晃)
◆3つのタイプ
東京都内に住む小学3年生の女児(8)はほぼ毎晩、おしっこを漏らすという。昼間は普通にトイレに行くが、就寝中は眠ったままおしっこをしてしまうため、紙おむつが欠かせない。母親は「本人はあまり気にしていないようだが、学校で泊まりがけの行事がある高学年になるまでには何とかしたい」と話す。
「おねしょは5歳未満の子供に見られる生理現象。5歳を過ぎても週に2、3日以上、夜中におしっこを漏らす場合、夜尿症の可能性が高い。慢性の病気なので放置しないでほしい」。兵庫医科大(兵庫県西宮市)小児科学教授の服部益治さんはこう説明する。
服部さんによると、小学校入学時点で10~15%、中学校入学時点で5%程度、高校入学時点でも3%程度の子供が夜尿症に悩んでいるという。「恥ずかしさもあり、周囲に相談しにくい病気。子供のプライドは傷つき、後片付けなどにストレスを感じる母親も多い」
夜尿症は、夜間の尿量が多い「多尿型」▽尿量は少ないが膀胱(ぼうこう)が小さい「膀胱型」▽これらが合わさった「混合型」-の3タイプに分けられる。多尿型は夜間、抗利尿ホルモン(尿を濃くして尿量を少なくするホルモン)の分泌が不足することなどが、膀胱型は膀胱が小さく尿をためる力が弱いことなどがそれぞれ要因。夜遅い時間に飲食するなどの生活の乱れやストレスなども原因となる。
◆怒らないで
夜尿症は成長とともに治るケースもあるが、小学校入学後も頻繁に漏らすようなら早めに小児科や泌尿器科で受診する。「治療には専門知識を要するため、事前に診療の可否を確認した方がいい」(服部さん)。夜尿症に関する情報をまとめたウェブサイト「夜尿症(おねしょ)ナビ」(http://www.kyowa-kirin.co.jp/onesho/)にも専門医が掲載されている。
治療の際は夜間尿量を測定して夜尿症のタイプを見分けるほか、尿検査で尿の濃さや基礎的な疾患の有無なども調べる。必要に応じて残尿や腎臓、膀胱の奇形の有無を調べる腹部超音波検査なども行う。
そのうえで、まず行われるのは生活指導(家庭での対策)だ。夜更かしや不規則な生活は症状を悪化させるため、「早寝・早起き・朝ご飯」という規則正しい生活が不可欠。水分の取り方にも注意が必要で、朝食・昼食時はしっかり取り、夕方以降は減らす。夕食は就寝の2、3時間前までに済ませ、その後は水分摂取は控える。「喉が渇いたら氷を2、3個なめる」(服部さん)。入浴などで体を温めることも有効だ。
生活スタイルを見直すだけで約2割が改善する。改善しない場合は生活指導に加え、抗利尿ホルモン薬などによる薬物療法や、パンツに水分を感知するセンサーを取り付けるアラーム療法が行われる。服部さんは「漏らしても怒らないでほしい。焦らず治療を続け、漏らさなかった朝はしっかり褒めてあげて」とアドバイスしている。
■夜尿症 家庭での対策(服部さんの話を基に作成)
・規則正しい生活をする
・水分の取り方に気をつける
・食事の塩分を控えめにする
・就寝前にトイレに行く
・夜中、無理にトイレに起こさない
・体や布団を温める
・褒める、怒らない、他の子供と比べない、焦らない