子どもによく見られる病気 チック

チック  
自分の意志と関係なく、瞬間的に体をピクッと動かしてしまう症状が続く場合をチックといいます。
昔はストレスが原因でチックになると言われていましたが、今は脳の発達科学から原因が説明されています。
体を動かすチックの症状が何種類かあり複雑で、また声を発作的に出すチック症状もある場合は、『トウレット障害』と呼ばれます。
 

原因と症状
原因として、脳の中にある、大脳基底核という部分が関係していると考えられます。大脳基底核は、神経系の色々な部分から入ってきた情報を調節して、体の動きをスムーズで滑らかにする働きをします。
そこで使われる化学物質(ドーパミン)の受け取り手(受容体)が、過敏に反応しすぎると、チック症状が起こります。また大脳基底核に情報を送る、大脳皮質や大脳辺縁系なども関係していると考えられていますが、細かいことはまだわかっていません。
大脳基底核のドーパミンの活動は年齢により変化するため、チック症状がある場合も年齢が進むと自然に消えていく場合が多いです。
症状の始まりは、幼稚園~小学生低学年頃からが多いです。一時的に出現して2~3カ月で消えていく場合や、軽くなったり重くなったりして何年か続く場合があります。多くは中学生までのうちに消えていきます。
一時的に出現する軽い症状も含めると10~24%で見られるという統計もあります。
瞬間的に体を動かすのが主な症状です。例えば目をギュッと閉じたり、顔をピクッとしかめたり、肩をすくめたりします。
チック症状が声に出る場合もあります。軽い咳ばらいを繰り返したり、突然「ウッ」と大きな声を出したりします。
体のチックの症状が色々とあり複雑で、また発作的に声を出すチック症状が1年以上続く場合は、医学的に『トウレット障害』と呼ばれます。
  
 
 診断と治療
 チックがある場合は、外来でもその様子をみられることが多く、大多数は症状を観察することで診断をつけられます。他には、完全に眠ってしまった状態では症状が出現しないことや、一時的であれば意識的にチック症状を止めていられることなどが、他の病気からの鑑別点になります。
チックと診断がついたら、本人も回りも気にしないようにして自然に消えていくのを待つのが最もよいでしょう。
チック症状は、時期やその日その日によっても強さが違います。緊張する行事の前や、疲れなどによって一時的にひどくなり、回りが心配になる時もありますが様子を見守って下さい。
一部薬物治療をした方が良いと考えられる場合もあります。チック症状が強すぎて授業に集中できなかったり、トウレット障害の重い時などです。
薬物としては、ハロペリドールが使われることが多いです。この薬物は一般的には精神病に使われるのですが、チックの場合はドーパミン受容体の働きを抑える目的で使います。効果は7~8割の人で認められますが、完全にチックをなくすのではなく、症状を軽くする程度の使用法で十分でしょう。
 
 Q&A集
Q:親も小さい頃チックがあったのですが遺伝ですか?
A:遺伝が考えられていますが、おおげさに考えず、「親子で顔が似ることと同じ」程度にとらえていいと思います。脳の大脳基底核の仕組みにチックが出やすい体質があり、それが親子で似るのでしょう。


Q:ストレスが原因ですか?
A:1/3はストレスが引き金にはなりますが、原因ではありません。「脳の体質」は年齢によって変化し、ある年齢になると症状を起こしやすくなります。その時にストレスがあると引き金になってしまうことがあります。しかし、2/3は引き金がなくても症状が起こり始めます。またストレスの原因となるものを、取り除いてやることでよくなる事はあまりなく、よくなった場合はむしろ自然の経過と考えられます。しかし、ストレスがあることは、子供の生活環境としては好ましくないと思われますので調節してあげて下さい。


Q:お母さんの完璧主義が原因ですか?
A:「脳の体質」は、女性の場合にはチックではなく、少し神経質な完璧主義の性格を作るのではないかと考えられています。つまり因果関係が逆で、チックのお子さんのお母さんは完璧主義であることが多いということになります。


Q:育て方はどうすればよいのでしょうか?
A:接し方や育て方は今までと同じで構いません。また社会的なルールを覚えさせるために叱るべき時には、キチンと叱るようにして下さい。チックが増えるかもしれませんが一時的で心配ありません。
 

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