<要約>
夜尿症の頻度は、小学校入学時に10~15%程度、中学校入学時に1~2%、成人の1000~2000人に1人(約0.1~0.2%)とされています。
2005年に日本夜尿症学会からガイドラインが出されました。当院でもこれに基づき、
第一選択:夜尿アラーム(7~8歳以降の治療開始が推奨され、有効率は70%程度です。)
第二選択:抗利尿ホルモン(水分制限が守れる年齢からが対象になります。有効率は70%程度です。)
の順に治療を行い、時に漢方薬を併用しています。(夜尿症のタイプによっては例外があります。)
これらの治療法によって、0.3×0.3=9%とおおよそ90%以上の人が修学旅行に参加できます。
旧来の三環系抗うつ剤による治療は副作用の頻度が高く、当院では上記の治療法が成功しなかった時だけに制限しています。
<夜尿症の頻度>
小学校入学後も夜尿が続いている時に「夜尿症」と呼びます。
就学前の幼児に夜尿がある場合は、珍しくないことなので夜尿症とは呼びません。治療対象外です。
通常、治療対象は小学生以降です。
意外と頻度は多いのですが、夜尿症は人には言えず悩みの多い疾患です。
尿意の自覚は2~3歳までに可能になり、4歳頃になると夜間睡眠中でも排尿の抑制ができるようになります。
また抗利尿ホルモンの日内リズムができあがるのも3~4歳頃で、
夜間寝ている間は抗利尿ホルモンが日中の約2倍分泌されて、尿量は日中の約6割に減ります。
赤ちゃんは分泌のリズムができていないので、昼夜を問わず排尿します。
(老人になっても同様に、眠りが浅く抗利尿ホルモンの分泌リズムが狂い、夜間尿が出るようになります。)
成人は夜間睡眠中は副交感神経の働きが抑制されて膀胱壁が弛緩し、昼間に比べて約1.5倍多く貯められるようになります。
赤ちゃんは夜間も副交感神経の働きが抑制されず膀胱壁が弛まないため、昼間と同じ容量で尿意が現れ排尿します。
そのため夜尿は乳児期までは全ての子どもにみられますが、2~3歳頃より急激に減少し、
4歳児では成人同様の自律神経のコントロールとホルモン分泌の日内リズムができあがる子供が多く、夜尿児は約30%に減ります。
小学校就学時には約10~15%程度となり、毎年10~15%の子供が夜尿から卒業していって中学校入学時には1~2%となります。
つまり小学校の6年間で治療しなくても1/10に減るのです。
学童期を平均すると夜尿症の頻度は約5%と言われています。
学童期までは夜尿症の男児が女児の2倍多いとされています。
思春期(特に小学校高学年から中学生前半にかけて)に治る率が上昇し、年率20%近い治癒率になります。
しかし思春期を過ぎると治りにくくなって一部の人は成人まで持ち越してしまいます。
特に思春期を過ぎると逆に女性の方が難治となり、成人まで持ち越しやすいようです。
中学校入学時にあった夜尿症は成人するまでに徐々に減り、自然経過で1/10に減ります。
その結果、成人の1000~2000人(約0.1~0.2%)に1人は夜尿があるとされています。
成人まで達すると相当悩みが深く、誰にも相談できず、結婚を諦めたり、自殺未遂をしたという例もあるそうです。
<夜尿症の病因と夜尿症児の特徴>
夜尿症のある小児の背景の特徴としては、遺伝的素因が強いことがあげられます。
夜尿症のある小児の家族を調べると、両親のどちらかに夜尿症があった割合は約70%と言われ、
兄弟姉妹にも夜尿のみられる頻度が高い傾向にあります。
また両親のどちらかが(飲酒や多量飲水のなかった日でも)夜間尿のためトイレに行く場合は、
成人になっても、夜間尿量<最大膀胱容量 という状態になっていないことを意味し、夜尿の素因があると言えます。
つまり夜尿症は心身症ではなく、遺伝的要因が大きい疾患であると言えます。
親に似て遺伝的にホルモン分泌の日内リズムの確立が遅れていることが多く、根性や気合いでは治りません。
叱ったり、精神的プレッシャーで悪化する例も報告されています。叱って治る夜尿症はありません。
また排尿の習慣付けのために夜間一定の時間に親が強制的に起こしているケースがありますが
眠りが浅くなると抗利尿ホルモンが十分に分泌されませんので、自立を妨げることもあります。
何か器質的な疾患がなければ、ホルモン分泌の日内リズムがいつかは確立するのですから「焦らず」ということが大切です。
親が焦ると子どもにプレッシャーを与え逆効果です。
発達の仕方や知能の程度、夜尿の有無も親に似るものです。
親に夜尿の既往があっても現在、成人してからは社会人として支障なく生活しているように
夜尿症のある児とない児を比べて、幼児期の発達、知能や学業成績に差はありません。
親と同様、夜尿児は発達障害児ではないのです。
夜尿症児では身体発育が遅れていることが多いのですが、
夜尿症児の多くは脳下垂体からのホルモン分泌の日内リズムが確立されていないため
本来、脳下垂体から夜間に多く分泌される抗利尿ホルモン(後葉)と成長ホルモン(前葉)が
日中とあまり変わらない量しか分泌されないため、夜間尿量が抑制されず、身長の伸びも遅れがちになっています。
身長がどんどん伸びる思春期に一致して、夜尿症が高率に治っていくのはこのためです。
夜尿症の子供は身長の伸びる時期が遅めで、どちらかというと奥手が多いとされています。
夜尿症の女児は初潮発来が平均より約1年は遅く、男児も変声期や身長のスパートが遅いようです。
しかし脳下垂体に腫瘍があるなどの重大な問題がなければ、初潮はいつかは来ますし、
男児の身長も高校生や場合によっては20歳代になってからでも伸びる人がいます。
このように夜尿症児は一般的に低身長の傾向がありますが、マイナス2SD以下の低身長の場合には
下垂体性小人症との鑑別も必要になります。
また夜尿症のある小児の既往歴の中では、膀胱炎などの泌尿器疾患の頻度が高い傾向にあります。
従って夜尿症児の器質的な泌尿器疾患が見過ごされていないか疑う必要があります。
また後述しますが、膀胱型夜尿症の中には膀胱尿管逆流症のある者がいます。
排尿抑制訓練を行う前に膀胱尿管逆流症の有無を確認しておく必要があります。
<精査が望ましいケース>
「発達が遺伝的に遅め」というだけでは片付けられない場合は以下のケースで精査が必要です。
・両親の家系に全く夜尿歴がないのに、子供が小学生になっても夜尿が治らない場合。
・排尿訓練をしても一向に膀胱容量が増えない場合。
・小学校入学時に遺尿がある場合。特に10歳を過ぎても遺尿がある場合は精査が必要。
・遺糞症も伴っている場合。
・低身長が著しい場合。
・尿路感染症の既往歴がある場合。
<精査する検査項目>
・泌尿器系→排尿時の逆流がないかの画像検査(MRIを使ってできる場合もあります。)
腎臓、尿路、膀胱の奇形がないかエコーやMRI検査(特に尿道下裂、尿管異所開口、尿道狭窄、腎低形成等)
・脳脊髄系→脳下垂体の腫瘍や二分脊椎がないかMRI検査、
・神経系→脳波検査(てんかん発作による尿失禁)、終夜ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群)、
・血液検査および尿検査→電解質やホルモン分泌能を検査
(日中も夜間も尿浸透圧が800mOsm/l以下の場合は、下垂体機能を中心に精密検査を行う必要があります。
下垂体性尿崩症の可能性や、ごく稀ですが腎性尿崩症や糖尿病が夜尿の原因となることがあります。)
<夜尿症の重症度>
器質的疾患がなく、機能的な問題と判ったら夜尿症として扱い、重症度と病型分類をします。
・軽症: 夜尿が出るのは明け方で、1晩に1回程度で時には出ない日もある場合。→自立するまでに平均1~2年掛かります。
・中等症:毎日初回の夜尿は深夜に出て、1晩に1~2回夜尿が出る場合。→自立するまでに平均3~4年掛かります。
・重症: 毎日初回の夜尿は就寝後の寝入りばなに出て、1晩に2~3回夜尿が出る場合。→自立するまでに平均5~6年掛かります。
・昼間遺尿がある場合は最重症で、通常長期間(半年~4年程度)の治療が必要です。
<夜尿症の分類>
夜尿症の分類は国際的にまだ統一されていないそうです。
日本で一般的に用いられている分類を紹介します。
・多尿型:抗利尿ホルモンの日内リズムができあがっていない場合や、夜に水分を多量に摂る習慣があったり、
塩分の濃い食事やタンパク質の多い食事を好む時、尿崩症などがこのタイプになります。
一般的に膀胱型よりも治りやすいようです。
・膀胱型:副交感神経の作用が強すぎて膀胱の収縮を抑制できないタイプ。
夜間だけ膀胱容量が少なくなる膀胱Ⅱ型と、昼夜問わず膀胱容量が少ない膀胱Ⅰ型があります。
膀胱Ⅰ型には昼間遺尿を伴うことが多い。昼間遺尿回数が多いほど難治です。
膀胱Ⅰ型は全般に難治傾向で数年(半年~4年が目安)かかることが多いようです。
成人まで持ち越す治療抵抗性の人には膀胱Ⅱ型が多いようです。
・混合型:上記2型の混合したもので、どちらも発達途上である幼児~小学校低学年に多いタイプです。
これら3型がほぼ同数ずついますが、小学校高学年になると多尿型が多くなります。
・正常型:これら3型が治る直前には正常型となります。
稀に毎晩5~10mlの極少量の夜尿が続いている子供がいますが、原因不明で難治です。
<自宅で多尿型を見分ける目安>
・朝起きた後の最初の尿の色が薄い。
・夜尿の量が多い。
・夜尿の臭いが少ない。
・昼間の水分摂取量が多い。
・季節変動が大きい。
・昼間の尿の回数が少ない。
<自宅で膀胱型を見分ける目安>
・昼間の尿失禁がある。
・昼間の尿失禁の自立が遅かった。
・昼間の排尿回数が多い。
・昼間、尿の我慢ができない。
・朝起きた後の最初の尿の色が濃い。
・季節変動が少ない。
<夜尿症の分類のために必要な検査>
・夜間尿量(就寝前に排尿させてから起床時までの尿の合計)
1回毎の夜尿量(夜尿で濡れたオムツの重さ-使用前のオムツの重さ)の一晩の合計+起床時の尿量 で計算します。
適正な夜間尿量は、睡眠時間を約9~10時間とした時、体重(kg)の5~9倍は正常で、平均は7倍です。
30kgの子供なら210mlが正常値です。
・1回の夜尿量(=夜間の最大膀胱容量)
排尿抑制訓練を兼ねて、学校から帰ってきたら毎日1回だけ精一杯尿を貯め、量を記録します。
これも体重(kg)の5~9倍は正常で、平均は7倍です。
体重30kgの児で150ml以下の尿しか貯められないと膀胱容量が物理的に少ないか、膀胱が過緊張にあると言えます。
但し尿路感染症の既往がある児はこれを始める前に膀胱尿管逆流症がないか確認が必要です。
・昼間の最大膀胱容量(理想的にはこれが夜間の最大膀胱容量になります。)
起床時の尿量が排尿抑制時の尿量より多い場合には、それをもって機能的膀胱容量とします。通常この二者は同程度になります。
・尿比重もしくは浸透圧(深夜の夜尿が出る前の尿比重と、昼間の尿比重の両方が判ることが理想的です。)
夜間の尿浸透圧の測定には午前2~3時頃に目を覚まさせ、排尿させた尿の浸透圧を3~4日間測定してその平均値をとります。
<夜尿症治療>
夜尿症は自然経過で治癒する確率が高く、就学児では年間10~15%ずつ自然治癒していきますが、
就学期以降も持続する夜尿に対して、治療を望む親子は多く、
特に高学年になって修学旅行の前に慌てて治療を開始するケースも目立ちます。
しかし難治性のものでは治療に3~4年を要することが多く、
海外では第一選択とされている夜尿アラームが7~8歳から有効なことから
修学旅行に間に合わすためにも小学校低学年から取り組むのが良いと考えます。
夜尿治療に関して2005年に日本夜尿症学会からガイドラインが出されました。
治療については国際的に治療効果が認められているものだけが紹介されています。
治療には大きく分けて、
1.生活指導
2.行動療法
3.薬物療法
の3種類があります。
海外や日本の幾つかの大学病院泌尿器科では、
1.夜尿アラーム
2.抗利尿ホルモン点鼻
3.抗コリン剤
4.三環系抗うつ剤
という優先順位で治療を行っている施設が多いようです。
小児科医の中には、3.と4.の薬物療法を第一選択とする医師もまだ多いようです。
副作用と再発率の頻度が少ないという点から、当院では通常、
1.の夜尿アラームを第一選択、2.の抗利尿ホルモンを第二選択としています。
副作用の頻度から三環系抗うつ剤はできるだけ避けています。
(個人的には睡眠を浅くして覚醒し易くするのであれば、エフェドリン(麻黄)を含んだ漢方薬の方が余程安全と思っています。
また成人の場合、鬱の患者に抗うつ剤を投与すると非常に元気になりますが、
健康な精神の人に抗うつ剤を投与すると体が重く、元気や食欲が無くなってしまいます。小児でも同様のことが起きます。)
夜尿アラームの有効率は70%程度で、抗利尿ホルモンの有効率も70%程度です。
従って闇雲に第一選択の夜尿アラームを行っても治癒しない児が3/10、
残りに抗利尿ホルモンを投与して更にその3/10が治療抵抗性ということになります。
単純に計算すると、3/10×3/10=9/100 と1割程度の人が治癒せず残ります。
夜尿症ガイドラインの委員である経験豊かな小児科医の元では、
治療による1年後の治癒率は51.8%で、全く無効例は4.8%、特に思春期以降も残る治療後の夜尿症児は2~3%だそうです。
自然経過では1年に10~15%程度しか治癒しないので治療成績は良いと言えます。
では、具体的に各治療法について見ていきましょう。
<生活指導>
どの程度効果があるか明確な根拠はありませんが、
食事内容、飲水量、排尿習慣のコントロール、就寝時排尿の履行が一般的に行われています。
塩分、タンパク、牛乳の過剰摂取の制限、夕方以降の飲水制限が行われます。
特に後述する抗利尿ホルモン剤使用時は飲水量のコントロールが重要になります。
<行動療法>
夜尿アラーム療法、一定時間での覚醒療法、心理療法、排尿訓練(排尿抑制、排尿中断など)、
バイオフィードバック療法、鍼、電気刺激、低周波療法、超音波療法などが行われてきました。
この中で夜尿アラーム以外は効果が不安定であり、まだエビデンスとして十分確立されていません。
個々の行動療法がどういった場合に有効かも明らかにされていません。
有効だろうと言われているものもあり、有効性の証明や適応例については今後の研究課題です。
<夜尿アラーム>
1.原理と方法:
下着にセンサーを取り付け、尿をするとアラームが鳴る仕組みです。
これによって「尿意覚醒するトレーニング」だと誤解されることが多いですが、
多くの症例では睡眠中の最大膀胱容量が増大し、尿意覚醒をせずに朝まで持つようになります。
いわば「夜間の排尿抑制訓練」とも言えます。昼間の排尿抑制訓練と併用します。
夜尿時膀胱容量は有効例では、1~2ヶ月で約1.5倍と急激に増加します。
但し患児自身が排尿時に覚醒する必要がありますが、本人が起きないケースが多く、親が起こす必要があります。
アラーム音で家族が睡眠不足になることがあり、親が協力的でない場合は適応ではありません。
2.観察項目:
夜尿日記に夜尿日数や夜尿回数を記録します。
可能であればアラームが鳴った時刻も記載すると良い。
有効例ではアラームが鳴る時刻が徐々に朝方になります。
3.有効率:
メタアナリシスでは有効率は62~78%(約7割)と高い。
また治療中止後の再発率は、どの薬剤よりも再発率が低く、15%程度です。
つまり夜尿アラームで治療した児の約6割が数ヶ月の取り組みで治癒し、その後治療を必要としません。
多くの場合、本人が起きずに親が起こす必要があるため、drop out率が10~30%と高いことが問題です。
親が協力的でない場合は不成功に終わることが多く、適応外と言えます。
海外ではこの治療法を第一選択にしている文献が多く、
後述のDDAVPやイミプラミンより有効率が高いとする論文も散見されます。
4.注意点:
夜尿日数が週に2~7日の場合は治癒率は28%しかないが、
夜尿日数が週に6~7日の場合は治癒率は58%と高くなります。
基本的に「夜間の排尿抑制”訓練”」なので毎日アラームが鳴る方が治癒率が高いと言えます。
但し一晩に何回も夜尿する多尿型夜尿症例では、ある程度食事や飲水制限をして尿量を減らしてからでないと治癒は困難です。
夜間の最大膀胱容量が増えてもそれ以上に多尿だと夜尿として出てしまうからです。
一晩に2回以上夜尿をする場合は、睡眠不足になることを避けるため1回目の夜尿時のみ装着し、
あとは装置を外すことが家族にも患児にも(長続きするために)望ましい。
通常、3ヶ月で効果が出ます。(稀に3ヶ月では不変でも1年程度かかって改善することもあります。)
3ヶ月経っても全く効果が見られない場合は、他の治療法へ移行するか併用治療します。
この治療法は就学以前の児には効果が乏しく、7~8歳以降からの開始が望ましい。
<薬物療法>
三環系抗うつ剤、抗コリン剤、抗利尿ホルモン剤、プロスタグランジン合成阻害剤、β2刺激薬、漢方薬、SSRI等の使用報告がある。
このうちメタアナリシスで有効性が証明されているものは三環系抗うつ剤と抗利尿ホルモン剤のみで、
この2剤以外は評価がなされていないか、無効である。
抗コリン剤はその作用機序から考えて、過活動膀胱が示唆される症例では有効性が期待されているが、
まだデータが不十分である。
<三環系抗うつ剤>
1.概要
アナフラニール>トフラニール(イミプラミン)>トリプタノールの順に作用が強い。
尿意覚醒を促進する作用、抗コリン作用、尿量減少作用があります。
抗コリン作用は抗コリン剤に劣り、尿量減少作用は抗利尿ホルモンに劣るため、
特筆すべき作用は「尿意覚醒を促進する作用」であると言えます。
イミプラミンが最も研究されていますが、薬理作用が複雑なため、どのタイプの夜尿に有効かは研究されていません。
2.治療法
初回投与量は10mgとし、夕食後あるいは就寝前に投与します。
就寝前は50ml以下の水で服用します。
効果が不十分な場合は、体重が25kg未満の場合は20mg、25kg以上の場合は25~30mgに増量します。
2ヶ月経っても全く改善しないときは他の治療への移行や併用を考慮します。
3.効果
有効率は、日本では43%、海外では50%前後と報告されています。
しかし投与中止後のの再発が多く、イミプラミンで再発率50%以上です。長期の有効率は17~25%と報告されています。
4.副作用
副作用の出現率は日本では12.3%と報告されています。
症状は、食欲不振、悪心、嘔吐、不眠、眠気、造血障害、肝障害、てんかん発作誘発です。
心毒性や多量服用による死亡例も報告されており、最も注意を要する薬剤です。
特にDDAVPや抗コリン剤併用時には相乗効果が起きやすい。
このためヨーロッパでは第一選択剤ではない。
筆者も投薬を中止せざるを得ない副作用症例を経験しており、エフェドリン(麻黄)を含んだ漢方薬を先に試しています。
当院では夜尿アラームと抗利尿ホルモンが無効で、尿意覚醒を期待する場合しか使用しない最後の選択肢です。