夜尿症について
1.定義
夜尿症とは、6歳(小学校1年生)以上になってもおねしょをしてしまう状態のことです。排尿機能の発達が未熟な状態と考えられ、ほとんどの場合、家系に遺伝があります。幼児の夜尿とは異なり病気の一種と考えられており、適切な対応が必要です。
2.医療機関受診の目安
小学1-2年生で週に4日以上、3-4年生で週に2-3日以上、5-6年生で月に数回以上のおねしょがあれば、原因を明らかにして今後の対策を検討するために、医療機関を受診されることをお勧めします。
3.原因とタイプ
膀胱容量(膀胱に貯めることができる尿量)よりも睡眠中に作られる尿の量が多いことが原因です。
多尿型:夜間に作られる尿量が多すぎるタイプ。膀胱容量は正常。
膀胱型:膀胱容量が少ないタイプ。夜間尿量は正常。
混合型:夜間尿量が正常より多めで、膀胱容量が正常より少なめ。
4.重症度
年齢が高いほど、夜尿の回数が多いほど、夜尿の量が多いほど、昼間に我慢できる尿量が少ないほど、治療に手こずります。生活指導だけで1-2年で改善する人もいれば、薬剤などを使用しても5-6年以上かかる人もいます。
5.記録が大事
タイプの判定、重症度の判定、治療効果の判定など、夜尿症診療では、おねしょの時刻、回数、量、朝一番の尿の濃さなどの記録を続けることががとても重要です。例えば一見改善していないように見えても、寝入りばなのおねしょが減って、夜明けにおねしょをするようになると改善傾向があると判断できます。
6.検査
検尿や採血を行って、内臓に特別な異常がないことを確認します。朝一番の尿検査をくりかえすことがあります。
7.生活改善
起こさない(睡眠不足やホルモンバランスの乱れに繋がり逆効果)、怒らない(劣等感を持たせない)、焦らない(気長に構える)ことが3原則です。
1)早寝早起きの規則正しい生活は全ての基本です。
2)睡眠の3時間前からの水分制限は必須です。夕食時の水分は100cc以下にして、その後は水分を摂らないようにします。日中の水分は自由に沢山摂ってかまいません(午後は午前よりも控えめに)。
3)塩分は尿量を増やします。塩辛いもの、スナック菓子などは控えましょう。牛乳の摂りすぎが原因のこともありますので注意しましょう。
4)冷えに注意。冷えると膀胱容量が小さくなります。冬は悪化しやすい傾向があります。
5)治そうとする意欲が大事。本人と一緒に記録をつけたり、少しでも改善したら褒めてあげるなど、家族が上手に励ましながら、長続きするようにしましょう。
6)膀胱容量の少ないタイプは、日中にできるだけ我慢する訓練をしましょう。目標は小学校低学年で150cc、高学年で250ccです。それ以上の我慢は不要です。
8.治療
生活改善で数ヶ月経過を見ても改善しない場合には薬物などによる治療を検討します。
1)多尿型:抗利尿ホルモン剤により夜間尿量を減らします(6-7割が改善)。
2)膀胱型:三環系抗うつ剤、抗コリン剤により膀胱容量を増やします(3-4割が改善)。
3)アラーム療法:夜尿の出始めにアラームで刺激することで排尿にブレーキをかけて膀胱容量を増大させます。適応を誤ると逆効果のことがありますので、医師に相談してください。機器の保険適応はありません。
9.相談は気軽に、治療は気長に
おねしょを誰にも言えず、どこに相談したら良いか分からず、密かに悩んでいる親子は少なくありません。おねしょは排尿機能の未成熟が原因の病気であり、親のしつけ不足でも、こどもの責任でもありません。成長と伴に自然治癒することが多いですが、一部の人は思春期以降も症状が続くことがあり、学校生活や社会生活で困ることが少なくありません。直ちにおねしょが無くならなくても、原因がわかり、対処法が分かれば、毎日のストレスが減ると思います。ほっておかずに気軽に相談してください。