質問:4月に小学生になった子どもがいますが、おねしょが治らずいまだに紙オムツをはいて寝ています。「紙オムツを使っている子はおねしょをしても不快感がないから起きてトイレに行くようになりにくい」と言う人もいますが、本当なのでしょうか。無理にでもパンツで寝るトレーニングを積ませたほうがいいのでしょうか?あるいはもっと厳しくしつけるべきでしょうか…?
答え:おねしょがなくなる時期は個人差が大きく、6歳でおねしょのある子は珍しくありません。おねしょの原因は寝ている間の「抗利尿ホルモン」の分泌量がまだ少なく、膀胱におしっこをためきれないことにあり、パンツで寝たからと言っておねしょが治りやすくなるわけでもありません。お子さんにプレッシャーをかけることはせず、まずは生活習慣を見直しながら見守りましょう。
石橋涼子(いしばし・りょうこ) 東京大学医学部卒業。大学での研修の後、NICU、総合病院、障害児施設などに勤務。1996年からまつしま産婦人科小児科病院(現・まつしま病院)小児科部長、2005年1月に東京・江戸川区小岩に石橋こどもクリニックを開院。
答える人 石橋涼子先生(石橋こどもクリニック院長)
おねしょがなくなるのは(1)膀胱の容量が大きくなる(2)夜間の抗利尿ホルモンの分泌量が増える の二つの条件がそろうことによります。これはどちらも子どもの成長に伴って徐々に進んでいくものですが、そのペースには大きな個人差があり、そのために、早くから夜のオムツが要らなくなる子もいれば、かなり大きくなってもおねしょをする子もいるのです。
(1)については、膀胱の容量が大きいほど、より尿を溜めておけるというシンプルな理屈です。(2)の抗利尿ホルモンは脳下垂体から分泌されるホルモンですが、日中よりも夜間のほうが分泌量が多くなる特徴(日内変動といいます)があります。抗利尿ホルモンが多く分泌されると尿が濃くなり尿量が減り、結果として寝ている間にできる尿を朝まで膀胱に溜めておけるようになるのです。つまり「おねしょが治る」ということは、尿を溜めるタンクが大きくなることと、夜間にできる尿の水かさが減ることが同時に進んでいくということです。
ですから、おねしょは急になくなるのではなく、最初はおねしょの量も多く夜の早い時間に出ていたものが、しだいに明け方近くなり量も減り、やがて朝までもつようになる、という経過をたどります。このペースの早い遅いは本人にはどうにもならないことなので、厳しく責めることはかえって悪影響になりかねません。「紙オムツだから濡れてしまっても平気」というのも怪しい話で、おねしょをする子はパンツが濡れてしまっても目が覚めないのがむしろふつうです。
おねしょの対処は「あせらない・怒らない。起こさない」と言われています。子どもの成長にしたがって治っていくものなのでむやみに焦らないこと、失敗してしまっても怒らないこと、夜起こしてトイレに行かせたりしないこと(寝ぼけ眼でトイレで排尿するのは「トイレでおねしょしている」のと同じことで、むしろかえってその時間に排尿する習慣をつけてしまうことになる)を原則として、まずは夕方から夜、夕食後に水分をとりすぎていないかを見直してみましょう。
おねしょは7~8歳になるとかなり減ってくるものですが、治りにくいおねしょの治療方法もいろいろ進歩しています。心配なら小児科で相談してみるのがいいでしょう。
柳瀬 徹 (フリーランス編集者、ライター)
Wedge 5/24(水) から転載